子供は親を選べません。
どんなひどい家に生まれても特別な理由がないかぎり、
その家で家族関係に悩みながら成長することになります。
父親から受ける傷
酔っぱらった父親の暴力、暴言は一番傷つきます。
しらふのときはやさしい父親であるだけに、その落差の大きさにとまどい、父親が信じられなくなります。子供にはそれがアルコール依存症という病気のせいだとは考えられないのです。
暴言を父親の本音だと受けとめた子供は「自分が悪いから父親が酒浸りになっているのだ」と誤解したり、自尊心を傷つけられることで「ぼくはこの家にいない方がいいんだ」と思い込んだりします。
母親から受ける重荷
酒浸りの父親は、父親の役目を放棄しているので、父親との絆はずたずたになっています。その分母親と子供の絆は強いのですが、子供を頼りすぎる母親がいます。子供は大切な相談ごとを母親から受け、父親の役目をこなすようになります。
不幸な母親を支えるのは自分しかいないと考えるようになった子供は、ひたすら良い子の道を歩きながら成長します。
そして、ふと気がつくと母親の人生がどっしりと自分の上に重なり、自分で選んだ道を歩くことなどできなくなります。つまり、母親から逃れられない苦しみなのです。
両親から受ける混乱
酔っぱらった父親の暴力、暴言に金切り声で応戦する母親。翌朝は母親のくどいお説教をじっと聞いている父親。そうかと思うと、その夜は他人の悪口を肴に飲んでいる父親に調子を合わせている母親。両親の間にあるのは憎しみなのか愛なのかさっぱり分からず、子供は混乱するばかりです。
また、今日は父親役をやらされたかと思うと、次の日は母親の役。子供であるのに子供の役回りはまったくこない。
学校へ行っても級友の考え方や行動になじめないのは、幼児期から明るくのびのびした子供らしい体験がなく、一足とびに大人にならざるを得なかったからです。
依存症家庭の子供は、友だちが少ないのが特徴です。
両親の不幸な関係を、幼児期から見てきた子供たちの中には、結婚に夢が持てなくて、なかなか結婚に踏み切れない場合があります。また、自分の育った家庭とはまったく違う、すばらしい家庭をつくろうとして、早すぎる結婚をすることもまれにあります。