自殺問題と断酒会

自殺対策問題と断酒会

断酒会員の自殺念慮

2009年自殺予防総合対策センターは全国の断酒会員を対象に自殺に関連する膨大なアンケート調査を実施しました(詳細は「アルコール依存症と自殺問題」参照)。
その結果、アルコール依存症者である断酒会員本人のうち、「本気で死にたいと考えたことがある」者が40.7%、「本気で自殺の計画をたてたことがある」者が23.1%、 「実際に行動に移したことがある」者20.1%というデータになりました。
「本気で死にたいと考えたことがある」については、内閣府が2008年に行った「自殺対策に関する意識調査」による数値の約2倍であり、しかも、このうちの半数が実際に自殺行動に移しているということは、アルコール依存症者の自殺リスクがいかに高いものであるかを物語っています。
さらに、注目すべきことは、70%以上が断酒会に入会する以前のことと回答している点です。同センターの報告でも、「断酒会が地域の自殺予防に関わることができる可能性があり、自助グループと連携した自殺予防活動が望まれることが浮き彫りになった」とされています。

自殺対策と断酒会

図 政府による地域での自殺予防問題に関連する施策が進むにつれて、断酒会への協力が求められるようになっています。上記アンケート調査においても、地域断酒会が地域連絡協議会の委員として、また自殺対策の研修会に講師として参加する例が増えてきています。今後、地域自殺対策緊急強化基金を利用した地域活動の活発化に伴い、より一層の協力を求められることでしょう。

自殺予防に関わる断酒会の効用

 依存症の中でも、アルコール依存症は「アル中」という社会的偏見の問題もあり、本人・家族、時には周囲までが病気を認めず、陰に隠れて治療が遅れる。そして次々に自殺要因を積み重ねていく結果となっている。
断酒会は自身でアルコール依存症と認めた者の集団である。入会して間もない会員の中には、自分が依存症であることを否認している者もいるが、断酒例会で体験談に接するうちに、その否認も解除されていく。
  • 断酒会はアルコールに限らず依存症の集団治療の場です。例会に出席することで、自殺に繋がりそうな要因を自ら語っていきます。また、意識的、無意識的にそのような方向に仕向けます。語ることで、また他人が語るのを聴くことで様々な気付きを得て、解決策を見つけ出していきます。
  • つまり、要因が重なる前に吐き出してしまうのです。人が吐き出すのを見て自分と共通部分を見出して安堵し、また解決へのヒントを掴んでいきます。
    要すれば、(1)一対一で支援するのではなく、一対多数、多数対一で(2)要因が重なる前に一つ一つ、問題を取り除いていくのです。しかも、個々人の間では支援されていると感じることはあっても、支援していると思う人はあまりいないでしょうし、支援していることを負担に感じる人はいないでしょう。それは相互に支援しあっているからです。
  • 時間はかかる。言わば漢方薬のようなものでしょう。しかし確実に効くことは断酒会員なら誰でも知っています。断酒会でも自殺者が出ないわけではありません。断酒という薬が効果を発揮する前に、あるいは薬を止めてしまったり(再飲酒)、使用を誤る例(断酒の方向性を見失う)も無いわけではありません。正しい使用を続けなければなりません。「何があっても会を離れるな」という言葉は、この間の事情を端的に語っています。
  • 断酒会は自殺に瀕してしまった人を「救済」する組織ではありません。断酒会に救済という言葉はありません。あくまで「支援」です。依存症により窮状に陥った一人一人が自力で立ち直れるよう支援する集団です。
    これからも門戸を大きく開いて、多くの人が自殺の瀬戸際に追いこまれることの無いように互いに支援し支援されながら生きましょう