女性ということで、男性とくらべハンディがある。世間体・家の用事・小さい子供の面倒などで断酒会に参加しづらい。女性酒害者の諸問題の大部分はジェンダーに行き着く。この根底にあるのは、もちろんアルコール依存症に打ち落とされた烙印であり、さらに女性が酒を飲むという、日本の従来の文化にそぐわない行為であるからである。
しかし、真実はまるっきり違う。女性のアルコール依存症はただ漫然と飲酒した結果ではない。女性特有の、結婚・姑との確執・子育て・子離れ・再就職など人生の転機に際し、自分らしく生きようと戦った結果であり、女性のアルコール依存症は、社会の縮図・人生の縮図なのである。
全断連では、女性会員にアンケートをしたことがある。その結果、アルコール依存症になった原因がはっきりしていると答えた人は70%で、さらにいつ頃・どのような原因という項目にも答えていることである。
このことは、男性とは明らかに異なる。一般に男性は長期間の飲酒で依存症になるということで、特定な原因はない人が多い。ゆえに、男性の体験談は依存症になって、やめたくてもやめられないという体験談が多い。それにたいして女性の場合は、依存症になっていく過程の体験談が多い。
女性は依存症になった原因を話したい。アンケートによると、若年層(25~34歳)と断酒1年未満の女性酒害者に、トラウマ(心の傷)についてもっと語りたいと思う人が多い。このことは、断酒会の入り口にはいりかけた女性酒害者が、アルコール依存症になったプロセスをもっと語り、わかちあいたいという切実な気持ちをもっていると考えられる。女性が入会して男性と同じ例会(集会)で体験談を話し・聴くことももちろん必要だが、同時に女性酒害者のみの例会(集会)に出席して、アルコール依存症になっていったプロセスとその時の気持ちをわかちあうのも必要なのである。